2015年公開の映画『スポットライト 世紀のスクープ』を紹介します。
この『スポットライト 世紀のスクープ』は、アメリカの新聞『ボストン・グローブ』が、カトリック教会の神父による児童への性的虐待とその隠蔽を暴いた、という実話を基にした社会派ドラマです。第88回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞しています。
あらすじ
2001年、アメリカ、マサチューセッツ州ボストンの日刊紙『ボストン・グローブ』に新しい編集長としてマーティ・バロンが就任する。バロンはボストン・グローブの取材チーム「スポットライト」に、カトリック教会のゲーガン神父が子供へ性的虐待を行った事件の調査を命じる。リーダーであるウォルター・ロビンソンを中心に、「スポットライト」の記者たちは性的虐待事件の被害者や弁護士、心理療法士などに取材し、ボストンとその周辺地域で約90人の神父が性的虐待を行っていたことを突き止める。しかし、教会側は証拠を隠したり、記者たちに圧力をかけたりする。そして調査が佳境に差し掛かる頃、9.11の同時多発テロ事件が起きて調査は一時中断される。
地味な映画
監督はトム・マッカーシー、出演は『バットマン』のマイケル・キートン、『アベンジャーズ』シリーズのマーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスら豪華な俳優陣ですが、この映画はとにかく地味です。あえて派手なエンタメ性を極力抑えて作ったという印象を受けます。巨大な組織の不正を暴く正義のヒーロー、みたいな安っぽい演出には走らず、とにかく淡々と、事件とその真実を追求する新聞記者を描くことを重視しています。
キャストも豪華だけど渋いんです。実話に基づいているからなのかもしれませんが、なんとなく平均年齢は高め。演技もあえて地味にしている気がします。たとえばマーク・ラファロがマイクという記者を演じているんですが、頑固で少し変わっている、というキャラクターなんです。もっとカッコいいキャラクターとして演じることはできたと思うんですが、あえてそれをしていないんです。
音楽も重厚なBGMのみ。歌は挿入されませんし、エンドロールでも歌は流れません。それが劇中の言葉、記者達の言葉、そしてこの事件そのものをさらに強調しています。
ジャーナリズムの意義
それだけ地味に作られたこの『スポットライト』ですが、やはり胸を打つのは記者たちの熱意ですね。事件を調査するなかで様々な障害や妨害にあいますが、絶対に記事にするんだという執念を持って真実に迫っていきます。中には他紙に出し抜かれる前に記事を出す、という競争心もあったのかもしれないですが、それよりも事件を明るみに出すという報道機関としての責任感、正義感を強く感じます。いつの時代も、どの国でも問われる、あるいは問い続けていかなければならないジャーナリズムのあり方について、一つの答えを提示しています。
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